水先人について

水先人について

水先人(PILOT)とは

国際信号旗の「H旗」(水先旗)

 日本の貿易量の99.6%は海上輸送が占め、その物資は年間約9億トンに及んでおり、主要な港に出入港する船舶は約10万隻に達しています。現在の私たちの生活にとって、船舶による海上輸送は無くてはならないものとなっています。
 日本の港湾は、複雑な地形やその地域特有の気象海象潮流などにより危険な場所も存在し、漁船を含め常に大中小様々な船舶が行き交い世界に類を見ないほど混雑しています。
 そのため、港湾内にはその地域特有の航路や交通ルールが多く定められています。
 世界中の多くの港に寄港する外航船の船長にとって、これら特殊な状況やルール等を全て把握することは非常に困難であることから、その地域の事情に精通した資格を持ったスペシャリストが船長のアドバイザーとして乗船し、安全かつ効率的に船を導くよう支援しています。このスペシャリストが「水先人(PILOT)」です。 写真のようにマストに白赤の旗を掲げている船は、水先人(PILOT)が乗船していることを示しています。この旗は国際信号旗の「H旗」(水先旗)と呼ばれ世界共通のものです。
 水先業務については「日本水先人会連合会」の公式YouTubeチャンネルに詳しく紹介されていますのでご参照下さい。

水先人になるには

 水先人が水先業務をおこなうには、国土交通大臣の「水先人免許」が必要です。また「水先人免許」は水先区ごとに一級、二級、三級の3等級に資格分けされており、業務をおこなう事が出来る船舶、種類が決められています。また、二級、三級水先人は、それぞれの級で一定の経験を積んだ後、進級のための教育訓練を受け、上級の水先人免許を取得することが出来ます。
 等級別の免許の行使範囲は次のとおりです。

水先人の免許の等級と行使範囲(日本水先人会連合会ホームページから)

 水先人の免許を取得するためには、まず「登録水先人養成施設」における水先人養成課程を修了し、水先人試験に合格する必要があります。登録水先人養成施設は、「海技大学校」に「水先教育センター」が設置されています。ここでは全国各水先区の現役水先人が講師として派遣され教育訓練をおこなっています。
 水先人免許を取得後、各水先区の水先人会に入会し、水先人会が定めた研修・訓練を受け最後に指導水先人による評価操船を経て水先業務を開始することになります。
 詳しくは、海技振興センターのホームページをご参照下さい。

伊勢三河湾水先区の特徴

伊良湖水道の1日分の全船舶のレーダー航跡
(伊勢湾海上交通センターホームページより)

 伊勢三河湾水先区は、中部地方の愛知県と三重県に囲まれた水域で、その入口には日本の海の難所といわれている幅約1,200m、長さ約3,900mの非常狭い「伊良湖水道航路」があります。名古屋港、四日市港、三河港など日本を代表する港を出入する船舶が1日400隻以上通航するなど大変混雑する航路であり、他に漁船も多数操業し内航船舶も多く通航する事から、当該水先区は外国船舶や総トン数1万トン以上の船舶に水先人の乗船を義務付けた「強制水先区」に指定されています。
 また、伊勢三河湾の背後には中部圏のものづくり産業を支えている名古屋港、四日市港、衣浦港および三河港などがあり、コンテナ船・自動車船・原油タンカー・LNG船・ばら積船など多種多様な船舶が日夜往来しています。特に名古屋港は2021年の総取扱貨物量が約1億8千万トンと20年連続日本一で、日本の海上輸送の拠点となっています。
 2022年度の水先業務実績は名古屋港(71%)、四日市港(13%)、三河港(10%)、衣浦港(6%)で、名古屋・四日市港で全体の85%にのぼっています。
 また、船種別ではコンテナ船(38%)、自動車船(27%)、ばら積・雑貨船(23%)、原油タンカー・LNG船等(12%)で、コンテナ船と自動車船の割合が66%と高くなっています。